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歴史を再現 熱中授業 |
世界史授業ライブC ――使えるプリント付き――
■著者=河原孝哲 |
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■目次 はじめに
76 ≫ イギリス市民革命
―古い世界と新しい世界を対比させることが大切
77 ≫ イギリス議会政治の発展
―王様と法律の名前が混乱しやすいので注意
78 ≫ ルイ14世とその時代
―エピソードが面白いが、一番重要なのは戦争と重商主義
79 ≫ プロイセンとオーストリア
―「恨み、晴らさでおくべきか」泥沼合戦の横綱相撲
80 ≫ 台頭するロシア
―強烈な個性を持つロシア皇帝たちがおこなった近代化
81 ≫ ヨーロッパ諸国の海外進出(1)
―まずはアジアでの「世界経済システム」の展開事情から
82 ≫ ヨーロッパ諸国の海外進出(2)
―今回はアメリカ争奪編。「三角貿易」へ話をつなぐ
83 ≫ 啓蒙主義
―「公民」よりマズい料理では納得してくれません
84 ≫ バロックとロココ
―文化史学習は作品を味わいながら楽しく進めましょう
85 ≫ 産業革命
―機械の構造を説明すると授業がわかりやすくなります
86 ≫ アメリカ独立革命(1)
―「印紙」と「お茶」と「コーヒー」が重要ポイント
87 ≫ アメリカ独立革命(2)
―ワシントンとフランクリンの活躍を強調
88 ≫ フランス革命(1)
―まず「革命」がおこってしまう条件を考えることが重要
89 ≫ フランス革命(2)
―フランス革命がややこやしいのはルイ16世のせい?!
90 ≫ フランス革命(3)
―ついにギロチン台への行進が始まる!
91 ≫ ナポレオンの登場
―フランス革命の終了と、新たなる英雄(エロイカ)の登場
92 ≫ ナポレオンの栄光と没落
―「ライン同盟」「ティルジット条約」「プロイセンの改革」が重要
93 ≫ ウィーン体制の成立
―19世紀の平和を築きあげた保守反動「メッテルニヒの体制」
94 ≫ ラテンアメリカの独立
―ウィーン体制をゆるがす大西洋の革命運動
95 ≫ 七月革命とイギリスの自由主義的改革
―現代にもつながる七月革命の広がりや影響
96 ≫ 社会主義の発展と二月革命
―社会主義は20世紀にもテーマになるので、基礎を固めたい
97 ≫ 二月革命と三月革命
―「諸国民の春」の世界史における意義はけっこう大きいです
98 ≫ 東方問題
―ロシアは「絶対あきらめないストーカー」?
99 ≫ ヴィクトリア朝のイギリスとフランス第二帝政
―英仏の帝国主義の栄光と影
100 ≫ パリ=コミューンとイタリア統一
―どちらにもナポレオン「3世」が関わります
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■第C巻本文より T えーと、この前の続きで、イギリスの市民革命です。
S なんだかさー、イギリスのコレって難しくね?
T 難しい。それは専門家も認めているね。理由は、革命に「宗教」がからんでくるからですよ。フランス革命やロシア革命ではそれはないです。
S あー、めんどい。
T 逆に言えば、全国の高校生が面倒くさく感じてしまうのが「イギリス市民革命」なので、ここをマスターしてしまえば、一歩先が見えますよ。
S 今日も宗教がからみますか?
T からみまくりです。だから、「イギリス市民革命」には2時間かけます。
さて、前回、アイルランドを征服し、オランダを圧倒したクロムウェルは軍と政府の最高官職である護国卿(Lord Protector:プリント76のカッコ25)に就任し、軍事独裁体制を布きます。熱心なピューリタン(カルヴァン派)であるクロムウェルは厳格極まりない態度でイギリスを治めたのですが、なにしろ「日曜は教会に行け!演劇などの娯楽は禁止する」、「なに、賭博?いかん!酒もいかん!」と禁止しまくったので、イギリスはまるで葬式のような「清らかな」国になってしまった。ユーモアが大好きなミスター=ビーンの国、イギリスは悲鳴をあげたが、強い性格と独裁権を持つクロムウェルには誰も何も文句を言えなかった。
そのクロムウェルがついに死んでしまいます。息子のリチャードが後を継いで護国卿になりますが、器ではなかったことが明らかになってしまい、本人は早々と辞退しました。そこでイギリス国民は大喜びでフランスに亡命していたチャールズ1世の子、チャールズ2世(カッコ1)を呼び戻して王位につけました。これを「王政復古」(カッコ2)と言います。
S 日本史の「王政復古の大号令」と似ていないかい?
T 日本史用語を西洋史にあてはめた例でしょうね。「ピューリタン革命の時の政治責任者を罰さない」というブレダ宣言を出して、イギリス国王になることができたチャールズ2世は陽気で享楽的な王様だったので、イギリス国民にはめちゃウケしました。しかし、おフランス帰りのチャールズ2世には疑惑もありました。「あの王様は、実は隠れカトリックじゃねえか?」
たしかにフランスやその近辺諸国での亡命生活が長かったし、熱狂的なカトリック信者のフランス国王ルイ14世から支援を受けています。本人は「い、いや、わ、わしはカトリックじゃないよ」と言っていましたが、カトリックを支援しているような雰囲気もある。怪しい、ということで議会は、王を抑えるために二つの法律を定めます。この二つの法律はイギリス憲政史上、大変に重要な法律なので勉強してください。まずは審査法(カッコ3)。内容は「イギリス国教会の信者以外は公職に就けないことを定めた法律」(カッコ4)です。
S 同じイギリス人でも?
T イングランド人であろうとカトリックやカルヴァン派(ピューリタン)は役人になれない。この法律を作ってしまえば、いくらチャールズ2世がカトリック信者を重要な役職につけようとしてもできないことになります。
次に人身保護法(カッコ5)。内容は「法によらない逮捕や裁判を禁じた法律」(カッコ6)です。この法律があれば、チャールズ2世がイギリス国教会の信者を迫害しようとしてもできなくなる。
S うむむ。「人身保護法」は「権利の請願」と内容が同じですね。
T よく気が付きました。「人身保護法」は、「権利の請願」を法文化したものです。この二つの法律が生まれた時期に、イギリス議会は単なる王政のチェック機関ではなく、「おれたちが政治を仕切っているんだ」という意識を持ってきます。すると、議会の中では政党が生まれてくる。例えばトーリー(カッコ7)党。意味は「アイルランドの無法者」というひどい内容で、反対派からつけられた罵声語です。隠れカトリックかもしれないステュワート朝の王権を擁護する党派で、保守的な地主が支持者でした。
S その「アイルランドの無法者」は、カトリック信者の多いアイルランドにひっかけて言ってるんですか。
T いいカンしてますね。その通りでしょう。さて、トーリーに対抗して、ホイッグ(カッコ8)党が現れますが、これは「スコットランドの謀反人」というひどい意味。王権に反対して議会を擁護する党派で、商工業者に支持者が多かった。これも商工業者に多いカルヴァン派と、そのカルヴァン派の勢力が強いスコットランドを皮肉った名前です。
名誉革命―カトリックであるか、ないかが大きな目安
T ルイ14世のような絶対王権を確立できなかったチャールズ2世は、結局は無念のうちに死にました。チャールズ2世には子どもがいなかったので、後を弟のジェームズ2世(カッコ9)が継ぎます。ところがこの弟には問題があった。フランス生活が長かったジェームズ2世は、実ははっきりとしたカトリック信者だったのです。
S お兄ちゃんのようにごまかせばいいものを…。
T 苦労人のお兄ちゃんと違って、甘ちゃんだったんですかねえ。幸いと言うべきか、このジェームズ2世には子どもがいなかったので「まあ、いいか。どうせこの王様は一代限りだ」と議会も我慢していたのです。が、なんとジェームズ2世に子どもが、それも男の子ができちゃったんです。ジェームズ2世は大喜びでこの子にカトリックの洗礼を授けました。と、いうことは、2代は確実にカトリックの王がイギリスを支配するということです。信仰面でも経済面でもカトリック王の支配は認めたくない議会は、新たに「プロテスタント」の王を海外から招こうとします。
S センセー、タンマ!さっきからジェームズとか、チャールズとか、イギリスの王様の名前がゴチャゴチャになって、全然覚えられませーん。
T ありゃりゃ。では、いい方法を教えて進ぜよう。ステュアート朝の王様の名前はたしかに覚えづらいので、マクドナルドのビッグマック方式で記憶してしまいましょう。
S なんじゃそりゃ。
T マクドナルドのビッグマックの形を思い出してください。(と言って黒板に書いてみる)一番上と下のパンがジェームズで、2つのバーグがチャールズと覚えると、上から数えてみた時、ちょうどステュアート朝の王様の順番になります。
S 真ん中のトマトは何ですか?
T この真っ赤なトマトはクロムウェルですよ。
S なーるほど。
(後略)
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