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身近なモノから 暮らしと文化を学ぶ |
新・モノでまなぶ日本地理 ―― モノから人へ――
■著者=小田忠市郎 |
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■目次 〔1〕北海道
・日本最北端証明書
・ブラキストン線
・北海道旧土人保護法
・アイヌ民族と縄文人
・『アイヌ神謡集』
・道産子
・ガラナ飲料
・シラカバの樹液
・オーストラリア村
・マリモ
・流氷
・コンブ
・「襟裳砂漠」から魚つき林へ
・猿払村のホタテ
・木質バイオマス燃料
・ジャガイモ
・道産米・ゆめぴりか
〔2〕青森県
・陸奥
・津軽と太宰治
・リンゴ
・八戸
・せんべい汁
〔3〕秋田県
・秋田おばこ
・マタギ
・あきたこまち
・竿燈
・秋田リサイクルコンビナート
〔4〕岩手県
・旧田老町の大防潮堤
・つめくさ
・小岩井農場
・漆
・南部鉄器
〔5〕山形県
・最上川と紅花
・さくらんぼ東根駅
・冷やしラーメン
・芋煮会
・方言手ぬぐい
・フェーン現象
〔6〕宮城県
・杜の都
・海のしっぽとカキ
・歴史津波を記す神社
〔7〕福島県
・原発と戊辰戦争
・福島 フクシマ FUKUSHIMA
〔8〕群馬県
・からっ風
・蚕
・コンニャクイモ
・スバル
・ブラジルタウン
・ぐんまのやぼう
〔9〕栃木県
・ギョーザ
・かんぴょう
〔10〕茨城県
・水戸納豆
〔11〕埼玉県
・さつまいも
・深谷ネギ
・草加せんべい
・アイスクリーム
・岩槻人形
・砲丸
・トトロが守った里山
〔12〕東京都
・江戸前寿司
・くさや
・小松菜商品
・鉛筆
・アニメ
・東京スカイツリー
・東京駅の「空中権」
・明治神宮の森
・武蔵野の平地林
・多摩ニュータウンの狸
〔13〕千葉県
・落花生
・二十世紀梨
・醤油
・クジラのタレ
・上総掘り
・天然ガスとヨード
・君津製鉄所のケミカルリサイクル
〔14〕神奈川県
・シューマイ
・チョーク
・日産自動車追浜工場
〔15〕福井県
・「福のある井」の希望
・サバ街道
・越前和紙
・メガネフレーム
〔16〕石川県
・金沢箔
・加賀野菜
〔17〕富山県
・常願寺川と立山カルデラ
・鱒寿し
・ホタルイカと蜃気楼
・YKK
〔18〕新潟県
・魚沼産コシヒカリ
・雪国まいたけ
・枝豆
・亀田製菓と亀田郷
・チューリップ
・チタンカップ
〔19〕長野県
・「故郷」の原風景
・県歌「信濃の国」
・信州の方言
・ぴんころ地蔵
・レタス
・信州味噌
・寒天
・木曽ヒノキ
・白馬岳の黒馬
・冬山の強風
・県境
〔20〕山梨県
・水晶と宝飾品
・南アルプス市
・ファナック
〔21〕静岡県
・静岡県の自慢
・フルート
・ツナ缶
・サクラエビ
・白砂青松と津波
・足柄峠
・50ヘルツと60ヘルツの境
〔22〕岐阜県
・岐阜城
・美濃焼
・高級包丁
〔23〕愛知県
・名古屋人
・瀬戸物
・三州瓦
・えびせんべい
・アサリ
・八丁味噌
〔24〕三重県
・「うどん」と文化圏
・津・阿漕浦
・尾鷲ヒノキ
・林業女子会
〔25〕大阪府
・大阪弁
・もうかりまっか
・大坂と大阪
・八百八橋
・私鉄王国
・ハードロックナット
・オルファカッター
・三角楊枝
〔26〕京都府
・京都の景観
・京野菜
〔27〕滋賀県
・琵琶湖
・伊吹山
〔28〕兵庫県
・六甲山
・兵庫
・カラオケ
〔29〕奈良県
・吉野杉
・割り箸
・つり橋
・靴下
・墨
・奈良公園の生態系
〔30〕和歌山県
・木国
・備長炭
・北山村のじゃばら
・有田みかん
・南高梅と紀州うめどり
〔31〕鳥取県
・鳥取砂丘
・伯州綿
・まんが王国
〔32〕島根県
・美肌日本一
・ヤスキハガネ
・シジミ
・鳴き砂
〔33〕広島県・岡山県
・『春の海』
・瀬戸内の夕なぎ
・バレーボール
・桃太郎ジーンズ
・熊野筆
・マツタケ
〔34〕山口県
・新幹線の「おでこ」
・カニカマ
・ユニクロ
〔35〕徳島県
・阿波尾鶏
・葉っぱビジネス
・サテライトオフィス
〔36〕香川県・愛媛県
・うどん県
・オリーブ
・丸亀うちわ
・今治タオル
・ポンジュース
・イヨカン
〔37〕高知県
・四万十ドラマ
・沈下橋
・CO2吸収証書
・カツオ節
・『土佐の一本釣り』
〔38〕福岡県
・九州と福岡
・博多か福岡か
・久留米絣
・久留米のゴム
〔39〕長崎県・佐賀県・熊本県
・長崎の地図
・春一番
・長崎チャンポン
・佐賀の有明海苔
・プッチンプリン
・地下水都市
・熊本弁
〔40〕大分県・宮崎県・鹿児島県
・一村一品運動
・地熱発電所
・鶏糞発電
・ユネスコ・エコパーク
・火山灰
・菱刈鉱山
・黒豚
〔41〕沖縄県
・島唄
・ゆいレール
・島豆腐
・スパム缶
・沖縄赤瓦
・琉球ガラス
・ジュゴン
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■本書より 〔日本最北端証明書〕
T:これは宗谷岬の日本最北端証明書。稚内市長が証明しているんだ(同じような証明書には、日本最西端の与那国島の蛾「ヨナクニサン」が描かれた証明書などがある)。宗谷岬には、この証明書の写真に写っている記念碑のほかに、間宮林蔵の像もある。1800年に伊能忠敬が北海道を測量し、その8年後、間宮林蔵が樺太を探検し、翌年の1809年に間宮海峡を発見した。世界のなかでも日本人の名がついた唯一の海峡だ。
ところで樺太(サハリン)は、北海道からほんとうに見えるのかな?
S:見える!
T:実際に見えるんだ。宗谷岬から43q先のサハリンがよく見えるし、同じように与那国島の灯台からは111q先の台湾が、対馬からは50q先の韓国・釜山が見える。日本は列島の島国だから、地域によっては外国がすぐ近くにあるということだね。それぞれの国境も昔からあったわけではないし……。
S:樺太にはもともとどういう人が住んでいたんだろう?
T:アイヌの人たちなんだよ。言語学者の金田一京助が調べたんだけど、樺太と北海道のアイヌの人々が、同じ言葉を話していることが確認されたんだよ。(以下略)
〔木質バイオマス燃料〕
北海道下川町は金・銀・銅を産する鉱山で大いに栄えた時期もあったが、閉山となった現在、人口わずか3600人(ピーク時の4分の1)の過疎の町だ。しかし、今住民の顔はすこぶる明るい。木質バイオマス燃料の導入で町が活気を取り戻してきているのだ。2013年にオープンした町営住宅の暖房・給湯用の燃料は捨てられるはずだった木材。冬場は−30度にもなる寒冷地なので灯油代が大変だった。これを地場の産物で賄えるようになったのだ。
下川町の9割は森林で、町はここで生活していくためには森林資源を使うしかないと考えた。町は財政再建団体に転落したが国有林を買い進め、合併を回避して森林組合と林業を育成。フローリングや木炭、防腐用の木酢液や木の葉から抽出したエッセンシャルオイルなどをつくり、木を余すことなく使って利益を得た。森林組合は今では年間10億円を売り上げる町最大の企業となっている。
雇用も生まれ、若者が全国から集まってきた。森林組合の工藤尚和さん(40歳)は、36歳のときに大手通信会社から転職し、妻と2人の子どもとともにこの下川町に移住。工藤さんは「楽しいですね。充実しているといったほうがいいですかね」と話す。今、下川町森林組合は就職希望者が30人待ちの状態で、職員70人のうち半分以上がIターン、Uターンとなっている。また官庁から町職員に転職した人も少なくなく、仲埜公平さんは環境省時代に得た知識を生かして町の制度づくりなどに従事している。
下川町内で使う灯油や電気などのエネルギー費用は、年間で12億円にものぼるが、これを自前の木質バイオマス燃料に置き換えれば自給できる。町の林業からエネルギーをつくり、そしてさらに産業にすれば自立できる。そこでまず、バイオマスを使った熱供給システムを使って公共施設の42%で暖房・給湯を賄い、これにより年間1600万円を削減。その分、中学生までの医療費無料、保育料一律10%引き下げなどといった子育て支援に還元した。2015年には発電事業に踏み切る計画だ。 (参考:テレビ朝日「報道ステーション」2013年6月19日)
〔ジュゴン〕
人魚伝説のモデルといわれるジュゴン。かつては琉球諸島各地の沿岸に生息していたが、現在は沖縄本島の東海岸に数十頭生き残っているだけと推定されている。約10万頭いるといわれている世界のジュゴンは、ほとんどがオーストラリアの東北海岸にすみ、沖縄のジュゴンは、世界で最も北にすんでいる希少な群だ。
沖縄ではジュゴンはザンと呼ばれ、地元の人々にとって、貴重な食料であるとともに、津波を予言したり、引き起こしたりする「海の神」としておそれ深い存在だった。しかし、戦後の食糧難の時代にダイナマイトを使った漁によって大量に捕獲され、絶滅したと考えられていた。哺乳類学者の神谷敏郎氏は、その著書『人魚の博物誌』に「国の天然記念物であるジュゴンの姿は、もはや見ることはできない。かつてのベーリング島で大海牛を絶滅に追いやってしまったと同じ罪を、われわれは日本のジュゴンについても犯してしまった。毎年、奄美や沖縄には紺碧の海に魅せられて、大勢の人たちが訪ねるが、この海を日本の人魚の終えんの地として理解し、瞑想にふける人が何人いようか」と記していた。
ところが…(以下略)
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